さくらがやって来た!

さくら

2010年10月5日(火曜日)秋の空が澄み渡る暖かい日でした。
仕事を終え、みんなで事務所を出ようとした時、
ドアの向こうから
「ニャ~ン」

「うん? ネコ?」

そういえば夕方から、子ネコの鳴き声がしてたような。
     出かけようとドアを開いたら、なんと子ネコが・・・。


「あら、どこから来たの? 迷ったの?」
「ニャ~ォ」
首輪つけてるし、迷ったのかも、
でも、痩せたうえに汚れまくってるし、捨てられたのかしらね。
「ニャ~ォ~ オネガイします」
「ダメ! あっち行きなさい」

すがるネコを振り切って車を出した。
あら~ 必死に追いかけてくるネコがバックミラーに映ってる。
何とも不安定な格好で走る、その健気な姿を可愛そうと思いつつも、我慢!
助けても、飼ってあげることは出来ないし、後ろ髪引かれる思いで、
アクセルを踏み込んだ。

翌日の10月6日(水曜日)朝、事務所へ向かう途中、
きのうの子ネコが気になって、あたりを見回してみたが、見当たらない。
もう、どっかへ行ったみたい。
ネコ好きな人に拾われていますよう、そんなことを思ったりしながら
事務所に到着。
「ウワッ!」・・・いるし!

ドアの前に座って、こちらを見ている。


「おはようございます」 ドキッ!  ウソでしょう~、ほんとに~。

近づいてくるし 「ニャ~ォ」「ニャ~ォ」


「ちょっと~」


「なんで~」


「もしかして、ずっといたの?」

 「ハイ」

どうやら、きのう車を追いかけた後、またトボトボと事務所に
引き返してきたみたい。

「あのね、みんなネコが嫌いなの、だから、どっかいきなさい、ネ」
と言ったのだが・・・・。


お昼休みに、事務所のドアを開いたら、

「ぐう~、すう~」 ありゃ、いる。

放浪の旅で、疲れているんだろうな。
いびきまでかいている。
しかたが無い、そっとしといてあげよう。

所長のゆうさんが畑仕事に出かけようとドアを開いたら、まだガンバッテいる。


「おともしま~す」


子ネコはゆうさんの後をついていく。
「おまえ、がんばるな~」

  「ハイ」

まるで子犬のようについていく。


ゆうさんがやるように、小さな手でチョコチョコと土をかける。

畑仕事を手伝っているつもりかな。その後もゆうさんにぴったりマーク。

何とか、気に入ってもらおうと、それはもう必死。
どうやら、くっつくべき人間を見抜いている! 

ゆうさんは、スタッフに、

「牛乳があったでしょ、アレあげなさい」


「やっぱりあのおじさんはいい人だった」


おいしそうに、わき目もふれずに飲んでいる。
何かを口にしたのは久しぶりなのかも。

ゆうさんは熊本市の愛護センターや地元の合志市に電話をして、
迷いネコの届け出がないか、調べてみたが該当するものはなかった。

管轄の菊池市保健所に、迷いネコとして届けた場合どうなるのか、
里親を探す制度はあるのかなど、電話で尋ねてみた。

ところが・・・、
 迷いネコは、預かって一週間で処分するという。

保健所の職員から
「どうしますか?連れてきますか?」と聞かれ、
ゆうさんは
「いえ、連れて行きません」

・・・とは、いったもののどうするの? ゆうさん。

そのころ、子ネコは勝手に玄関で門番。



結局、しばらくはペットフードを与えることにして、玄関にダンボール箱を用意した。
今のところ夜間もそんなに寒くはないので大丈夫。

その間、近所で子ネコを飼ってくれる人がいないか、近くのコンビニに
チラシを貼ったり、ご近所に聞いてまわったりした。



子ネコが事務所の軒先で生活を始めて3日目のこと。 
私たちは熊本市内で開催の講演に出かけることになった。
すっかり慣れてしまった子ネコは、私とゆうさんの足元をペロペロ。
「じゃあ、いってくるからね」 

「ニャ~ォ」
かなり体力を回復したみたいで、元気に車を追っかけてきた。

講演が終わったころ、スタッフから電話が入った。
「子ネコがいません。」
「いつから?」
「車を追っかけたまま帰ってきません。」


講演から帰ってみんな何となくしょんぼり。
なんだろう、この脱力感。
みんなで探しまわったが、やっぱり見当たらない。


翌朝、心配したゆうさんは、もしかしたらと思い事務所周辺を探して回った。


しばらくして、ゆうさんが帰ってきた。
にっこり笑顔で、子ネコを抱っこしている。


なんと、ネコ嫌いのはずのゆうさんが抱っこ?

「どこ行ってたの?心配したじゃない。」




それから・・・

今ではスマイルビーのスタッフのひとり。


「コーヒーいれましょうか?」
「コピーしましょうか?」



さくらという名前もつけてもらい、スマイルビーのスタッフの一員になりました。
みんなから、頑張ったね!粘り勝ちだねと言われました。
お陰で皮膚病も中耳炎も治してもらい、とても健康です。
これから一生懸命、お役に立ちたいと思います。
                                 さくら



スタッフの一員になった「さくら」の物語でした。