講演の終了について
講演活動は終了しました。
2006年(H18年)から講演活動を始め、全国各地を駆けめぐりました。
映画から約30年を経て、講演を通じてやっと、映画を見てくださった方々の感想やお気持ちなどを知ることができました。いろんな方々との出会い、そして、様々な体験はわたくしにとってかけがえのない7年間でございました。
わたくしどもの講演活動に携わってくださった多くの方々、本当にありがとうございました。そして、真剣に耳を傾けてくださったすべての方々、中には遠いところから、また雪や雨の中、駆けつけて下さった方々、心から御礼申し上げます。
「のり子は、今」終演
講演活動の終了について、新聞各社の取材を受けました。なかでも、熊本市役所の退職当時から取材を続けてくださった読売新聞社の村方和樹記者の見出しと記事に感慨深いものがありました。
みだしは「『のり子は、今』終演」、映画のタイトルは「典子は、今」、名前をひらがなにしてありました。両方ともに、当時の自分の社会的な立場に区切りをつけたいという意志表現に思えたのです。
7年間の講演活動で、千葉県を除く46都道府県の約300カ所を訪れました。以前に映画を見た人が多く、「昔、元気を頂きました」といった声もたくさん聞きました。新任時代に映画を見た教師が校長になり、講演を依頼してくださったこともありました。
転機となったのは、東日本大震災でした。肉親や大切な人々を失った多くの人の悲しみを知ったからです。両腕がなくても前向きに生きる自分を語ってきましたが、「被災地の方々の深い苦しみは、私の障害どころではない」と思ったのです。
一方で、日本全体が「被災地のために自分に何ができるか」と考える機運が高まっているように感じました。さらに、講演で全国各地を廻るうち、映画出演時に感じた、珍しいものを見るような偏見のまなざしや、差別的な言葉は少なくなってきているように思えました。
そんな日々の中で徐々に「私が出る幕はなくなったかな」と心境も変化し、活動に区切りをつけようと思ったのです。同時にこれから、映画の典子ではなく、講演ののり子でもなく、一般人の白井のり子として新しい道への一歩を踏み出したいと決心したのです。
(2014年4月記)