熊本地震関連のニュースからピックアップ -2016年6月-

熊本地震関連ニュースピックアップは、熊本日日新聞の記事より抜粋しています。

6月1日(水) 熊本地震49日目

■「罹災証明」発行遅れ 県内39市町村職員育成怠る
熊本地震で罹災証明書の発行が進んでいない問題で、県内の39市町村が大規模地震を見越した担当職員を育成していなかったことが31日、熊本日日新聞の調べで分かった。災害対策基本法は、東日本大震災を教訓に、市町村に職員などの自前準備を求めているが、発行体制が整っていなかったことが浮き彫りになった。
罹災証明書は仮設住宅への入居のほか、被災者生活支援金給付、税や保険料の減免・猶予など、被災者支援策全般の判断材料となる。一部損壊から全壊までの4段階があり、半壊以上の判定には職員が現地調査しなければならない。2011年の東日本大震災では発行開始まで1ヵ月半(48日)かかった自治体があり、支援の遅れが問題化。このため13年に災対法を改正し、発行業務を市町村長の義務とした。調査に当たる職員を日ごろから育成し、他の自治体などと連携しておくことも求めた。
熊日が県内45市町村に取材したところ、熊本地震前に育成したと答えたのは、菊陽町や玉東町など6市町のみ。8市町村の担当者は、改正法の規定を「知らなかった」などと答えた。
国の通知では、必要な調査員数をあらかじめ算出し、災害時に素早く他市町村に応援要請が出来るようにすることも要請。しかし、県内で地震発生を想定していた市町村はなかった。

■一時離職や休業 3千人超
熊本労働局は31日、熊本地震に伴う勤め先の被災や業務悪化で、一時的な離職や休業(予定者を含む)に追い込まれた人が、県内で少なくとも3千人を超えたことを明らかにした。
被災しながらも従業員の雇用維持に努める事業者向けの支援策「雇用調整助成金」の実施計画書に計上された休業予定者数と、失業給付に関する労働者向けの特例措置の利用者数を集計した。
計画書は、5月26日までに99の事業者がハローワークなどに提出した分で、休業予定者は2,109人。

■テント村ありがとう
熊本地震で被災、避難した人のため、登山家の野口健さん(42)=東京都=らが益城町総合運動公園陸上競技場に開設、運営していたテント村が31日、閉村した。
テント村は、車中泊によるエコノミー症候群を懸念した野口さんが岡山県総社市などと協力し、4月24日に開設。ピーク時には156張に571人が暮らした。 
最終日は利用者が次々と荷物を運び出し、名残惜しそうに住み慣れたテントを畳んだ。東京から現地入りした野口さんに「お世話になりました」「ありがとう」と感謝する人の姿が目立った。

■義援金申請 きょうから 熊本市
熊本市は1日から、熊本地震の被災者に支給される災害義援金(1次配分)の申請を受け付ける。審査後、支給が決まった被災者には指定口座に振り込む。支給までのめどは約3週間。
対象は「災害弔慰金」「災害見舞金」の対象者でもあり、事前または同時にいずれかを申請する必要がある。その際に、診断書や罹災証明書を提出しなければならない。
同市の1次配分額は、死亡者・住家が全壊した世帯に1人(戸)当たり22万円。1ヵ月以上のけがを負った重傷者は2万2千円、住家が大規模半壊・半壊世帯は11万円。

■不明の大和さん捜索 きょう1ヵ月ぶり
熊本地震の県災害対策本部は31日、南阿蘇村の阿蘇大橋付近で車ごと土砂崩れに巻き込まれ、行方不明になったとみられる熊本学園大4年、大和晃(ひかる)さん(22)=阿蘇=の捜索を1日に実施すると発表した。
大和さんが不明になった4月16日以降、同大橋付近で無人重機を使って捜索したが、二次被害の恐れがあるとして5月1日に中断。その後はヘリによる上空からの確認にとどまり、家族らは捜索再開を要望していた。

6月2日(木) 熊本地震50日目

■不明の大和さん 再捜索
熊本地震の県災害対策本部は1日、南阿蘇村の阿蘇大橋付近で車ごと土砂崩れに巻き込まれて行方不明になったとみられる熊本学園大4年、大和 晃さん(22)=阿蘇市=の再捜索を白川沿いで実施した。
靴、衣類など16点を回収したが、いずれも大和さんのものではなく、手掛かりは見つからなかった。
捜索は、二次被害の危険性があるとして5月1日に打ち切って以来。県警と阿蘇広域消防本部の計120人に加え、警察犬やヘリを投入し、南阿蘇村の立野工事現場から大津町の瀬田集落まで白川沿いの約4㌔を探した。

■名城に復興のともしび ライトアップ再開
熊本城の天守と長堀前を照らすライトアップが1日、再開された。熊本地震で深い傷を負いながらも荘厳な姿を見せる名城は、復興へと歩みだした街の中で再び光を取り戻した。
熊本城は熊本地震の本震があった4月16日に未明に停電。受電設備や照明器具の修繕が終了し、管理する熊本市が再開を決めた。

6月3日(金) 熊本地震51日目

■国内線運航 全て正常化
全日空とソラシドエアは2日、地震の影響で運休していた熊本空港からの出発便計3便の運航を再開した。国内線の欠航は全て解消され、約1ヵ月半ぶりに正常化した。
熊本空港は。4月16日の本震でターミナルビルの天井が崩落するなど被災。民間航空機は一時全便が欠航していたが、同月19日から運航を順次再開していた。
熊本空港と海外を結ぶ国際線全3路線の欠航は続いているが、3日に中華航空(台湾)の熊本-台湾高雄線が再開する。

6月4日(土) 熊本地震52日目

■仮設「第1号」90戸完成
県が建設を進める熊本地震被災者用の応急仮設住宅のうち、甲佐町の白旗仮設団地90戸が3日、完成した。県内16市町村で2,500戸以上が着工済みだが、完成第一号となる。5日に入居が始まる予定で、住まいを失った被災者の生活再建が本格化する。
すべてプレハブで ▽1DK(20平方㍍)21戸 ▽2DK(30同)48戸 ▽3K(40同)21戸。
1戸当たりの敷地面積や通路を東日本大震災の仮設より広くし、床や畳表には県産材を活用するなどした。住居の「全壊」「大規模半壊」に加え、「半壊」被害を受けた住民ら90世帯250人が入居予定。

■追い付かぬ瓦屋根修理
熊本地震で多くの屋根瓦が被害を受けたが、1ヵ月半を過ぎた今も多くの家屋で修理が進んでいない。原因の一つが瓦業界の人手不足だ。一方で修理を急ぐ被害者の心理に付け込んで高額費用を提示するケースもあり、県消費生活センターなどは、複数業者から見積もりを取るなど慎重な対応を呼び掛ける。
1978年に瓦製造を含め150社を数えた組合加盟の県内業者は、長引く不況などで屋根工事中心37社に激減。業者数が限られる中、1社平均の注文は400件、多い社は1千件に達し、人手不足が深刻化している。
一方、県消費生活センターには、高額な屋根修理工事に関する相談も寄せられている。県瓦工業組合によると、不安をあおって契約を急がせ、簡素な工事で通常の3倍以上の費用を請求するケースもあり、契約上の注意をまとめたチラシを作った。

■台湾高雄線が再開 熊本空港
熊本地震直後から運休していた中華航空の熊本-台湾高雄線が3日、運航を再開した。熊本空港発着の国際線3路線では、初めての再開。地震前と同じく火、金、日曜日の週3往復運航する。
高雄からの最初の再開便は正午前に到着。歓迎の横断幕を持った空港スタッフや、県のPRキャラクター「くまモン」が台湾からの観光客ら153人を出迎えた。

6月5日(日) 熊本地震53日目

■県内梅雨入り 募る不安
気象庁は4日、九州を含む西日本と東海が梅雨入りしたとみられると発表した。熊本地震で地盤が緩み、余震も続く状況で梅雨を迎えた被災地は、土砂災害や河川の氾濫などに最大級の警戒を強いられる。地震発生から50日を超え、被災者は新たな不安材料に疲労感をにじませた。
気象庁によると、熊本を含む九州北部地方の梅雨入りは平年より1日早く、昨年より2日遅い。梅雨明けの平年は7月19日。昨年は同29日。6月に平年並み以上の降水量になる確率は70%という。

■「復興標語」20棟ずらり 熊本市中央区の通り
熊本県立劇場やハローワーク熊本などが並ぶ熊本市中央区の通りの建物に、「思いやりありがとう」「地域のきずなで熊本復興」などの復興標語が掲げられている。熊本地震に対する各地からの支援に感謝や決意を伝えようと、住民らが企画した。

■被災者「気が引ける」災害ボランティア
熊本地震から1ヵ月半以上たった今も、がれきや家財の片付けが進んでいない被災者が少なくない。県内外から連日ボランティアが入っているが、他人に頼むのは気が引けるといったケースや、そもそも依頼の仕方を知らない人も。被災者支援にかかわる支援団体は「きめ細かなニーズの掘り起こしが必要」と指摘する。
「一人では何もできなかった。ボランティアの方々のおかげです」。熊本市南区の女性(82)方は地震で壁材が落下するなど被災。1人暮らしのため片付けが進まなかったが、5月中旬にボランティアが訪れ、がれき撤去などを手伝った。
一方、同市東区の女性(43)方は今も被災時の状況のまま。庭には瓦などが散乱。台所の食器棚は倒れ、ガス台に覆いかぶさっさている。女性は「家の中のことを他人に頼むのは気が引ける」と言う。
避難生活との両立に難しさも。中央区の市総合体育館に避難している男性(77)は「避難所から自宅まで遠いので、片付けまで手が回らない。ボランティアの依頼の仕方も分からない」と表情を曇らせる。
同市災害ボランティアセンターは連日500人~千人のボランティアを派遣。個人宅の清掃や災害ゴミの分別作業などに取り組んでいる。回覧板やチラシで住民の要望を調査し、平日で100件、土日は200件近い依頼に応じているが、自宅にいない住民については把握しきれていないという。

6月6日(月) 熊本地震54日目

■甲佐町 仮設住宅入居始まる 説活再建へ やっと一歩
熊本地震の被災者向けに建設された応急仮設住宅への入居が5日、県内のトップを切って甲佐町で始まった。住まいを失った被災者は、ようやく生活再建に向けた一歩を踏み出した。
入居が始まったのは、県が町営白旗グラウンドに整備した「白旗仮設団地」(90戸)。西原村と並んで最も早い4月29日に建設が始まり、3日に完成した。県住宅課によると、グラウンドのナイター設備を活用して夜間の工事も可能だったため、建設が進んだという。
午前8時半から、町生涯学習センターで入居手続きが始まった。鍵を受け取った被災者たちは早速、ずらりと並ぶ住宅に家財道具や布団、トイレットペーパーなどの日用品を運んだ。
仮設住宅はすべてプレハブ平屋で1DK~3K(20~40平方㍍)。床や畳表に県産材を活用したほか、隣家と隔てる壁を丈夫にし、二重窓も備えるなど防音や断熱にも配慮した。家賃は無償だが、光熱費は入居者の負担となる。

■郵便物4900通 配達できず
熊本地震による住宅の倒壊などで、配達出来ない郵便物が約4900通に上っている。大半は被害が深刻な益城町と南阿蘇村で、日本郵便は避難先や転居先を最寄りの郵便局に届け出るよう呼び掛けている。
4月下旬のピーク時には配達できない郵便物が約1万3000通あったものの、その後、徐々に減少した。しかし5月末現在でも、益城町宛てが約3200通、南阿蘇村宛てが約1700通、保管されたままになっている。日本郵便熊本支社(熊本市)は「場所を移動した場合は忘れずに、今の場所を届け出てほしい」と話している。

6月7日(火) 熊本地震55日目

■熊本地震 火災16件
熊本地震で16件の火災が起きたが、阪神大震災や東日本大震災と比べて被害者が少なかったと言われている。防災関係者は、前震と本震が発生した時間や季節の幸運に加え、慎重な通電作業やガス導管の耐熱強化など、両震災の教訓も生かされていたと指摘する。
熊本地震と同じ都市直下型の阪神大震災の地震火災は293件、東日本大震災では、津波を起因とす火災を除くと239件が発生。いずれも多数の焼死者が出た。
一方、熊本地震は4月14~20日に熊本市や益城町など3市5町で前震後5件、本震後11件。複数棟が全焼したケースはなく、焼死者は八代市で起きたアパート火災の女性1人だった。
□熊本地震による火災発生
 熊本市 8 八代市 1 菊池市 1 益城町 1 御船町 1 南小国町 1 美里町 1 大津町 1 

■熊本城 石垣復旧 350億円
熊本地震で甚大な被害を受けた熊本城(熊本市中央区)の石垣の復旧費用は、現段階の試算で350億円に上ることが6日、わかった。崩落は全体(7万9千平方㍍)の10.3%にあたる約8200平方㍍、膨らみなどで積み直しが必要な石垣を合わせると29.9%に当たる約2万3600平方㍍となる。
城内では、国指定重要文化財や復元櫓など建造物も多く被災しており、全体の復旧費用はさらに増える見通し。

■公営住宅避難の被災者 仮設転居を容認
県は6日、熊本地震で県内外の公営住宅に避難した被災者が、応急仮設住宅やみなし仮設住宅に転居できるようになったことを明らかにした。内閣府との協議で弾力的な対応が認められたためで、市町村を通じて被災者への周知を進めている。
県によると、公営住宅に入居する被災者は5月末時点で1100世帯2670人に上る。内訳は、県外が30都道府県に493世帯1147人、県内が23市町村に607世帯1523人。

6月8日(水) 熊本地震56日目

■熊本地震 土木被害1902億円 災害で過去最大
県土木部は7日、熊本地震による道路や橋、河川など県や市町村が管理する公共土木施設の被害が、3,321ヵ所、1,902億4,200万円に上ると明らかにした。
県管理は849ヵ所の748億8500万円。阿蘇と上益城の両地域で被害が大きかった。市町村管理は2472ヵ所の1153億5700万円。このうち、熊本、南阿蘇、益城、阿蘇の4市町村で87%を占めた。
施設別の内訳は、被害額が大きい順に道路581億8千万円、橋405億600万円、下水道331億3700万円、公園292億8200万円、河川251億3400万円となっている。
本震から1ヵ月の5月16日現在のまとめ。国管理分は含まない。今後変動する可能性もあるが、県や市町村が管理する公共土木施設の災害被害額としては過去最大になる。

6月9日(木) 熊本地震57日目

■5月 震度1以上520回
気象庁は8日、5月の熊本地震の状況をまとめた。震度1以上は計520回で、4月の1093回から半分程度に減った。担当者は「活動は減退傾向が続いているが、依然として強い揺れが起きる可能性がある。梅雨入りして土砂崩れの危険性も高まっている」として警戒を続けるよう求めた。
気象庁によると、5月は、5以上の発生はなく、4が8回、3が43回、1と2は計469回だった。

■益城町の断層周辺 半数が損壊家屋・敷地生活
熊本地震で被害を受けた益城町の布田川断層周辺で、主に自宅で生活している住民の5割以上が、全壊または応急危険度判定で「危険」「要注意」とされた家屋やその敷地内で暮らしていることが8日、日本財団の調査で分かった。身の安全が保障されていない状態で就寝している住民も多く、梅雨期に入って浸水などの二次災害も懸念されている。
在宅を選んだ理由としては「農作業のため農地近くの自宅に戻った」「避難所生活でプライバシーが気になった」などがあがった。

■地震で不明 ペット戻ってきて 飼い主 懸命の行方捜し
熊本地震の混乱で、離れ離れになったペットを飼い主たちが捜している。熊本市動物愛護センターは、パニックなどで逃げ出したとみられるた多数の犬や猫を保護したが、行方の分からないペットも多い。センターや避難所の掲示板などには、ペットを探す張り紙がいっぱいだ。
熊本市動物愛護センターは、前震翌日の4月15日に犬7匹を保護した。一般の人が見つけたり、通報を受けてセンターが捕獲したりした犬たちだ。普段の保護数は犬と猫を合わせて1ヵ月に60匹だが、前震後は100匹に増えた。
センターは保護した犬猫の写真と特徴をホームページに掲載。通常は保護から4日で譲渡可能としているが、現在は特別に2週間に延長している。飼い主の被災に配慮してのことだ。地震後に保護したうち、犬を中心に37%は飼い主に戻った。このほか18%が譲渡された。のこりはそのまま保護している。

6月10日(金) 熊本地震58日目

■熊本地震の影響 熊本市小中学生「心のケア必要」新たに1215人
熊本市教委は9日、市立小中学校を対象にした熊本地震の影響調査で、地震から1ヵ月半たって新たに「カウンセリングが必要」と判断された児童生徒が1215人に上ったと発表した。
市教委は「被災から学校再開、運動会と続いて気持ちが高揚していた子供が、自分の異変に気づき始めたのかもしれない。心のケアが必要な子どもは今後も増える可能性がある」と分析している。
調査は全児童生徒6万1039人が対象。5月10~13日の第一回に続き、5月25日~6月3日に実施した。アンケートで「一人でいるのが不安」「夜眠れない」など前回と同じ17項目を尋ねた上で、各学校が学校生活の様子など踏まえ、カウンセリングの必要性を判断した。
その結果、必要と判断されたのは全体の3%に当たる1834人(小学生1349人、中学生485人)。前回より309人減ったが、半数以上の1215人(小学生944人、中学生271人)が今回の調査で新たに「必要」とされた。「カウンセリングをしてほしい」と自ら訴えるケースもあったという。
市教育委は、全国の臨床心理士の応援を受けてスクールカウンセラー約60人を配置し、全小中学校で相談にあたっている。当分は現体制を続け、調査も定期的に実施する予定。

■M6余震「可能性低下」
政府の地震調査委員会(委員長、平田直・東京大教授)は9日、東京都内で定例会を開き、熊本地震の状況について「活動は減退している。マグニチュード(M)6程度、最大震度6弱程度の余震が発生する可能性は低下した」とする評価をまとめた。
ただ九州では過去に、M6程度の地震が2~3カ月の間をおいて発生したことがあることから、会見した平田委員長は「今後も最低1ヵ月程度は注意が必要。復興に向けた活動ができる状態になったが、強い揺れに備えた上で作業をしてほしい」と強調。さらに、「梅雨に入り、地震で緩んだ地盤での土砂災害に警戒が必要」と述べた。

6月11日(土) 熊本地震59日目

■自宅「半壊」で仮設入居 解体の誓約書求めず
県は10日までに、自宅の解体を条件に「半壊」まで入居対象を広げた熊本地震の仮設住宅について、申込時に必要としていた解体の誓約書を求めないことを決めた。県は「事務手続きの簡素化が目的と説明するが、事実上の要件緩和となった。
仮設住宅の入居は原則として、自宅が全壊した被災者が対象。熊本地震では国と県との協議で大規模半壊に続き、半壊も家屋の解体・撤去を条件に対象を加えた。いずれも罹災証明書の判定に基づき入居を申し込むが、半壊の場合は解体を約束する誓約書の提出が必要だった。
今後は、解体によって居住できないことを入居申込書のチェック欄で示せば済む。自治体が借り上げる民間賃貸住宅(みなし仮設)でも同様の対応となる。

■益城町9団地976戸 入居へ 競争率 最高4.8倍
益城町は10日、熊本地震の被災者向けに県が整備している応急仮設住宅9団地計976戸の抽選結果を発表した。自宅が大規模半壊の世帯を対象とした1次募集で、1382件の応募があった。希望が集中した6ヵ所で抽選となる一方、希望者が大きく下回る団地もあった。
最も競争率が高かったのは木山団地の4.8倍で、70戸に対し336件の応募。
町は仮設住宅の必要戸数を1200戸と推計。2次募集は、自宅を解体する半壊世帯まで対象を広げて6月下旬に募集を始める予定。

■屋根修理におおわらわ
梅雨の晴れ間が広がった10日、熊本地震で被災した屋根瓦の修理に施工業者らが大忙し。
「雨が降ると、ますます作業が遅れる」と今年の梅雨の行方を心配する声もあった。宇城市の瓦屋によると、地震後、例年の1年分となる約300件の依頼があっが、これまでに完了したのは約40件にとどまる。「人手が足りない上に、梅雨は作業ができない日が多くなる。早く安心してもらいたいが、まだ当分かかりそうだ」と話していた。

■水遅れず 田植断念 253農家 転作にも不安
御船町東部を流れる農業用水路「元禄・嘉永井手」が熊本地震で被害を受け、農業用水を送れない状態が続く。受益地の農家は、今年の田植えを断念。井手の水は防火用水としても重宝されてきただけに、地元では早期復旧を望む声が高まっている。
井手を管理する七滝土地改良区によると、元禄井手が整備されたのは1600年代後半、嘉永井手は1800年代半ばごろ。二つの水路は総延長28㌔。受益地は同町東部から南部の175㌶に及ぶ。
地震で土砂崩れや水路の壁、そこの亀裂など井手の20ヵ所以上が被災、水を送れなくなった。同土地改良区によると、全組合員353人が田植えを見送った。
一部農家はキュウリやカボチャなど代替作物の栽培を始めたが、多くの農家は転作作物の種類を決めかねている。同土地改良区は「転作の奨励金もあるが、気温が低い地域で作物がうまく育つかどうか心配だ」と話す。

6月12日(日) 熊本地震60日目

■泣かないで 元気を
俳優の舘ひろしさん(66)らが所属する芸能事務所「石原プロモーション」が11日、益城町総合運動公園陸上競技場で炊き出しを始めた。石原プロは、東日本大震災などさまざまな被災地への炊き出し訪問を続けており、名物のカレーや豚汁などで熊本地震の被災者に笑顔を届けた。
舘さんを含む俳優陣やジャニーズのメンバー、地元のボランティアら約100人が協力。「元気食堂」と名付け、1日最大1700人分を提供する。隣接する町総合体育館の避難者らに、事前に食券を配布した。15日までで、14日は南阿蘇村や西原村へ出張する。

6月13日(月) 熊本地震61日目

■八代市で震度5弱
気象庁によると、12日、午後10時8分ごろ熊本地方を震源とする地震があり、八代市で震度5弱を観測した。
主な震度は、震度5弱が八代市坂本町、震度3が八代市平山新町、八代市松江城町、八代市千丁町、宇城市小川町、人吉市蟹作町、球磨村渡、あさぎり町須惠、上天草市姫戸町。

6月14日(火) 熊本地震62日目

■熊本地震 きょう2ヵ月 避難所なお6400人
熊本地震の被災地は14日、4月14日の前震発生から2ヵ月を迎えた。県が整備中の応急仮設住宅は65団地2951戸のうち、完成したのは5団地232戸(13日現在)にとどまる。約6400人は避難所生活を続けており、生活再建に不安を抱えたままだ。
住宅被害は全壊7534棟、半壊2586棟、一部損壊10万7774棟(13日現在)に上る。罹災証明書は12日現在、35市町村14万6177件の申請のうち、34市町村が10万3362件を交付したが、被害認定調査を不服とした2次調査申請が相次ぎ、市町村は対応に追われている。
避難所は13日現在、20市町村が145カ所を開設。避難者数が最も多いのは益城町の2119人、次いで熊本市の1601人、南阿蘇村972人など。県外や車中泊などの避難者も多く、仮設住宅など住まいの確保が課題となっている。

■八代市 震度5弱 県内観測4月19日以来
12日午後10時8分ごろ、八代市坂元町で震度5弱の地震があった。県内で震度5弱以上の揺れを観測したのは4月19日以来。九州新幹線は熊本―鹿児島中央の上下線で運転を見合わせ、熊本駅と新水俣駅で足止めされた各1本の乗客300人以上が列車内で夜を明かした。
気象庁によると、震源地は熊本地方で、震源の深さは約7㌔。地震の規模はマグニチュード4.3と推定される。同市坂本町では13日午後3時54分ごろにも、震度4の地震があった。

6月15日(水) 熊本地震63日目

■避難者1割に血栓 エコノミー症候群原因
熊本地震によるエコノミー症候群の無予防に取り組む熊本市などの医師グループは14日、避難生活をしている男女2023人のうち、185人(9.1%)で同症候群の原因となる血の塊(血栓)が見つかったと発表した。同症候群は主に足にできた血栓が肺に詰まったり、胸痛や心停止を引き起こす。地震後、医師グループや県、厚生労働省などが予防を進める「キーププロジェクト」を開始。益城町や熊本市などの避難所延べ約100カ所で足の超音波検査をした。今回は4月19日から5月5日までのデータを集計。受信者の平均年齢68.1歳に対し、血栓を確認した185人は同74.9歳、70代以上が120人と64.9%を占めた。女性は139人だった。
年齢別で見ると、血栓を確認した割合は高年齢ほど高く、80代以上が15.2%で最多。年齢が下がると割合も減少し、20代はゼロだった。
割合は日数の経過でも減少し、同プロジェクトは「行政や報道による予防啓発が有効だった可能性がある」と分析。また185人中60人(32.4%)が睡眠薬を使用しており、深い睡眠で足を動かさなかった可能性を指摘した。一方、県の調べでは同症候群の入院が必要な患者は51人で、うち42人が車中泊だった。今回は「車中泊の経験あり」は92人と半数にとどまり、明確な関連は見られなかった。

■熊本地震 全壊は8496件
県は14日、熊本地震に伴う家屋被害について、13日までに交付された罹災証明書の被害別内訳を公表した。約10万5千件のうち、「全壊」は8,496件で、「大規模半壊」「半壊」を含めると、約4分の1に当たる2万7,176件が甚大な被害を受けている。
県が14日に開いた政府との合同災害対策本部で報告した。県のまとめによると、罹災証明書の申請件数は、13日までに球磨郡などの10町村を除く35市町村で約14万7300件に上る。交付済みは、熊本市5万7190件、益城町7814件、宇土市5283件、合志市5176件などとなっている。
このうち、熊本市では、全壊2999件、大規模半壊3122件、半壊6418件。益城町では、全壊2577件、大規模半壊644件、半壊1080件だった。

6月16日(木) 熊本地震64日目

■余震2カ月1740回 昨年の国内発生数並み
熊本地震は16日、4月16日の本震発生から2カ月を迎えた。依然として活発な地震活動が続いており、震度1以上の地震は、同14日の前震発生から6月15日午後5時までに1742回に達した。昨年1年間に全国で観測された震度1以上の地震は1842回で、2カ月間でその約94.6%となる異常な状態が続いている。気象庁は、今後も強い余震の恐れがあるとして注意を呼び掛けている。
同庁によると、本震後、大分県や熊本県南部へ地震が飛び火。それ以降、長さ150㌔以上の帯状の広い範囲で地震が続いている。地震回数は4月14~30日の17日間で計1093回。5月1~15日は368回。6月1~15日午後5時は129回と減少傾向にある。

■「必ず捜し出すから」 続く家族の闘い
家族の時間は止まったままだ。熊本地震の土砂崩れに巻き込まれ、南阿蘇村で行方不明になったとみられる大学生、大和晃(ひかる)さん(22)=阿蘇市=の両親と兄が15日、現場近くで手掛かりを捜した。「じっとしていられない」。発見を願い続けて、もう2カ月になる。
晃さんは4月16日未明、熊本市から自宅に車で帰る途中、阿蘇大橋の崩落に巻き込まれたとみられている。県による捜索は1日を最後に、再開の見通しが立たないまま。両親と兄は現場へ通い続けるつもりだ。「時間はかかるかもしれないが、必ず捜し出すから待っててくれ」。晃さんに語り掛けた。

■学生村に祭壇 南阿蘇村
本震から16日で2カ月。東海大生3人が犠牲となった南阿蘇村河陽の「学生村」では、倒壊した建物が余震や雨などにさらされ、被災当初より傾いたものも目立った。アパートの1階部分がつぶれ、学生1人が犠牲となった現場には、1カ月前にはなかった祭壇が置かれ、花や飲み物がいくつも供えられていた。今も仲間数人とがれき撤去などの活動を続けている農学部の学生は「2カ月たっても何も変わらない。来月から熊本市で授業が再開されるが、時間を作って作業に来たい」と話した。

6月17日(金) 熊本地震65日目

■県内 罹災証明 3割未発行 2次調査相次ぐ
熊本地震で被害の大きかった益城町や西原村、南阿蘇村、熊本市などで家屋の罹災証明書の発行が本格化して約1カ月。申請は15日までに県内35市町村で14万8787件に上り、交付が済んだのは73%の10万8294件。判定を不服として2次調査を依頼する被災者も相次いでいる。
罹災証明書は「全壊」「大規模半壊」「半壊」「一部損壊」の4段階。半数以上の申請に対しては、自治体職員が家屋の外観を目視し1次調査を行う。判定によって支援内容に大きな差があるため、被災者はより重い判定を求める傾向にある。
県内で最も多い約8万6700件の申請を受けている熊本市。市役所や各区役所などの窓口には、今も1日数百人の被災者が申請に訪れる。15日までに交付したのは、1次調査をせずに即日発行した「一部損壊」を含め約5万9500件。一部損壊が最も多く78%、半壊11パーセント、大規模半壊5%、全壊5%だった。これ以外の約2万7000件(申請の約3割)が未発行だ。
熊本市は15日までに全国の自治体職員延べ4545人の応援を受け、1日平均180人が調査にあたっている。5月末までに申請を受けた分は6月10日までに交付準備を終えた。その後の調査も順調に進んでいるという。
一方で判定を不服とし、建物内部を調べる2次調査を求める人は、約1万6200件に上っている。このうち交付済みは約300件。5月末までに受け付けた約6300件について、6月中に2次調査を終えたいとしている。

■火の国まつり「開催」復興祈り8月5、6日
熊本市の夏祭り「火の国まつり」について、大西一史市長は16日、復興を祈念するイベントとして開催する意向を明らかにした。8月5、6日の予定で、7月5日の運営委員会で正式決定する。
大西市長は「避難所には1500人ほどの被災者がいて、生活再建が急がれる」と前置きをしつつ、「イベントがあることで前向きな気持ちになる。規模は変わるかもしれないが積極的に頑張りたい」と述べた。
火の国まつりは民間主体の運営委と市の共催。6日にあった運営委の本年度初会合では、開催を前提に準備を進めると申し合わせた上で、最終決断は市長の意向を待つとしていた。名称は「がんぱろう熊本!第39回火の国まつり」とし、呼び物の総踊りの観覧席に被災者を招く案も出ている。

6月18日(土) 熊本地震66日目

■南阿蘇村 村外避難
熊本地震で被災した南阿蘇村は17日、新たに4か所、約300戸の仮設住宅建設を発表し、住民支援の環境整備を本格化した。ただ、村外に避難して所在不明になった世帯が、甚大な被害が出た旧長陽村だけで少なくとも150世帯に上る。村内への帰還を望む住民をどうやって把握するのか、新たな課題として浮上している。
南阿蘇村の4693世帯1万1453人のうち、村内へ隣接する大津町の各避難所で約千人が過ごす、その一方で、村外の賃貸住宅や親族の家に身を寄せる世帯も少なくない。
村は被害が大きかった立野、長陽の両地区を中心に各区長を通し実態調査に着手。両地区がある旧長陽村は1915世帯があったが、17日現在、150世帯が避難した場所や連絡先を把握できていないという。全村になれば、所在不明の世帯はさらに膨らむとみている。
また、最低2年間の授業休止が決まった東海大阿蘇キャンパス(同村河陽)の周辺でも人影はまぱらになった。学生アパートなどに住民票登録をぜすに住んでいた約800人が離村したためだ。
仮設住宅への入居募集や生活再建支援制度などの情報に加え、参院選の通知も控えている中、多くの村民の連絡先を確認できない現状は問題を複雑にする。村の担当者はホームページなどで発信しているが、「村外に避難した人に届いているのだろうか」と頭を抱える。

■復旧費に210億円
熊本市は17日、熊本地震で甚大な被害を受けた熊本城の天守閣と飯田丸五階櫓(やぐら)、本丸御殿の3施設の復旧費が、概算で約210億円になると明らかにした。
崩落した石垣の復旧費は別途約350億円と試算しており、現時点での熊本城の復旧費は合わせて約560億円となった。場内にある13の国指定重要文化財や、残る17の復元櫓は被害額が算出できておらず、総額は今後さらに増える見込み。

■復興へ 鳴らせ陣太鼓 20日から販売
お菓子の香梅(熊本市)は17日、熊本地震の影響で休止している人気和菓子「誉の陣太鼓」の販売を20日に再開すると発表した。地震発生から約2カ月を経て、熊本代表する名菓が復活する。
全使用品を製造する西原村の工場が被災して稼働を停止、陣太鼓は5月初めから品切れとなっていた。工場の仮復旧を終え、14日に製造を再開した。

6月22日(水) 熊本地震70日目

■熊本県内豪雨 6人死
県内は20日夜から21日未明にかけ、1時間雨量の最大値を4地点で更新するなど記録的な大雨に見舞われた。このうち甲佐町の最大値150.0ミリは気象庁の観測点で全国歴代4位タイ。
各地で土砂崩れが相次ぎ、熊本市など4市町で6人が死亡した。
県災害対策本部などによると、5人は自宅近くの山などが崩落した土砂などに巻き込まれて死亡、1人は自宅前で土のうを積む途中に浸水した水たまりに倒れ、水死した。
家屋の被害は全壊2棟、床上浸水128棟、床下浸水419棟。浸水被害のほとんどが益城町だった。熊本地震を機に出されていた避難指示、勧告の対象は大幅に拡大。対象世帯は20日より約6万9千世帯、対象人数は約17万人増えた。
公共施設では、18河川の45カ所で護岸が崩壊。このうち益城町の木山川では堤防が決壊した。斜面崩壊などによる国、県道の全面通行止めは40区間に上った。